観音竹・棕櫚竹を総称して、日本観棕会では、(観棕竹カンソウチク)と呼ばれています。
ヤシ科に属する常緑多年植物で、その中でも最も矮性の小型種になります。
これらの天然生北限は、奄美大島です。
沖縄の観音山に自生していたことより(観音竹)という名がつけられていたという説もあります。
当時、沖縄では不老不死の植物(千年草)と呼ばれていたことから、めでたい縁起の良い植物として栽培されていました。
園芸種としては江戸時代から栽培されており、昭和初年に初めて在来観音竹に縞が現れて、
当時の人気の高かった蘭・おもととともに栽培されるようになりました。
本来の自生地は南中国、台湾の亜熱帯植物で、戦前、多くの品種が当地より日本に持ち込まれ、品種数も昭和15年には35種が登録(愛知観棕会発足当時)されており、昭和22年に日本観棕会が発足され、現在まで新品種が登録され、平成31年度では、設立72周年になりますが、全品種で137種が日本観棕会の銘鑑に登録されています。
☆温暖地は3・4・5月が春、6・7・8・9月が夏、10・11月が秋、12・1・2月が冬
☆寒冷地は3月が冬、9月が秋
3月になると日中は暖かくなり、少しずつ新芽が動き出します。灌水は、午前から日中の気温の高い時間帯に1日に1回の割合で、晴天の日に与えましょう。基本、灌水は1日1回ですが、雨天の日は灌水の必要はありません。5月に入れば植え替え、株分けの最適時期にはいります。肥料も3月下旬より玉肥中粒を2個、月に1度の割合で与えましょう。新芽の動かない木は根が傷んでいますので、絶対に肥料を与えないで下ください。
1年中で最も発育の盛んな時期ですので、肥料を与えて通風と採光に注意して1日に1~2回たっぷりと灌水してやります。
比較的、肥沃な植物ですが、肥料は1度に多量に与えるよりも、少量にして回数を多く与えることが肝心です。
肥料は、油粕に骨粉が入った固形肥料を中粒2個与え、水肥料は月に1度、ハイポネックスなどの2,000倍希釈液を月に2度が目安です。成長の悪い木には、肥料は控えましょう。
9月は、日中の気温は相当高いので夏の栽培方法で十分ですが、下旬には夜に気温が下がり、10月には日光も弱く気温も下がりますので、灌水は午前中の気温の高いときに1回与えるのが良いでしょう。
(夕方に水をやると、根を傷めることがあります。)
加温設備の無い場合、肥料は10月上旬までに終えましょう。成長は気温の低下とともに、にぶくなりやがて停止するので、夜は室内かフレームに入れておきます。
原産地が東南アジアの植物で寒さに弱いので、霜が降りる前に温室に入れるのが理想ですが、最低鉢が凍らないように室内(できれば、南向きの暖かい部屋など)に取り込みます。
灌水は、毎日やる必要はなく、乾いてから暖かい日の午前中に与えるようにして、寒風には絶対当てないことです。
この期間は冬眠状態で、成長が止まったまま越冬します。温室で、夜間の最低気温を12度以上に保つ設備があると成長しますが、換気や熱源に注意しないと蒸れたり、悪性ガスが発生して木を傷めて失敗することがあります。
もし栽培について困った時はお気軽に当店までお尋ねください。
観音竹は比較的病気には強い植物ですが、美術品としてとらえていく植物ですので、病害虫をさけなければなりません。予防に重点を置いて栽培します。主な病気としては、「褐斑病」「黒斑病」「サビ病」などであり、予防および消毒薬としては、「サプロール」「ダコニール」「ダイセン」「ベンレート」「トップジンM」など市販品も様々なものがあります。
虫害はカイガラ虫、コナアブラ虫などで予防および消毒薬としては、「マラソン」「スミチオン」などがあります。
予防として月に一回の薬剤散布が理想でしょう。また、同じ薬品を使い続けると耐性ができ、薬品が効かなくなることがありますので、できるだけ毎月薬品を変えることをおすすめいたします。散布時期は、早朝と日中を避け、晴天時の午前中が良いでしょう。葉の裏表、株元にもかかるようにムラなく散布します。また、植え替え時にバケツに薬品の水溶液に浸した上で植え込むと消毒効果が上がるようです。
植え替え・株分けの適期は4月後半から10月初旬です。
加温設備のある場合は盛夏を除きいつでも行えます。
上部の水苔を取り除き、鉢を斜めに向け軽く叩いて砂を出しながら株を取り出します。腐った根や黒ずんだ根を切り取り、清水で株元も同時に洗います。作業する時に根の乾きは禁物です。水中に浸しておくのがよいでしょう。また、幹、葉の湿度保持にも気を付けてください。植え替えは、用土を入れ、上部は水苔で覆います。灌水は、幹、葉ともにたっぷりとかけ、植え替え後は、夏は涼しい所、冬は暖かい所の棚下で2週間位、毎日灌水とともに葉水もやりましょう。
株分けしようと思う子株は、葉が4・5枚、根は2本以上ついている場合に行います。親株と子株のつながっている所は細くくびれているのでそこをハサミで切り離します。分けようとする子株の根が1本しかない場合は半年後、あるいは1年後にまわします。植え込み後の管理は、植え替えの場合と同様です。尚、植え付けの順序、方法は、図を参照してください。
観棕竹は小型ヤシ科の常緑多年植物です。愛情をこめて栽培されるとその寿命は永遠です。
心を込めて栽培してください。いつまでも貴方の観棕竹は、成長し子孫も増やし続け、あなたの気持ちに応えてくれるものになるでしょう。
1.栽培技術を磨く。葉柄短く、背丈低く非常によく締まった木姿が珍重され、これらの実現には、伝統的な栽培スキル、多くの経験、特別なスキルは必要です。栽培は簡単ですが、観棕竹の伝統的な木姿に仕上げるには、経験と知識が必要となります。それらの経験と技術を後世に伝えることも大切なことでしょう。
2.その美を競う。斑の入り方は、美を競う中では不可欠なもので、同じ品種でも千差万別の柄の木が出現してきます。葉全体に細かく分かれた縞が入ったものが、あらゆる方向から見ても綺麗に映ることから最上柄として珍重されますが、その出現率は低く、希少価値をより助長するものになっています。綺麗な木姿で最上柄の木を作りましょう。
栽培した自慢の木を出品し、競う、展示会・品評会は、地域にある各支部、そして日本観棕会でも年に一度開催しています。交流の場は結構あります。
3.多くの品種を収集する。銘鑑に登録されている品種は、平成31年度の銘鑑に137品種登録されていますが、これらを順番に揃えていくというコレクションの楽しみ方も決して容易ではありませんが、実に楽しいものです。因みに、全品種をそろえているのは、私と、それらを輸入されたタイの大型規模の熱帯植物園だけです。
4.新品種の作出。新しい品種を作出するか、他所で見つけ出し、増殖し、新品種として登録する楽しみもあります。観棕竹は結実が困難な植物で、実生による増殖、新品種作出はとても難しく、全登録種の内実生による作出は、1割前後しかありません。ほとんどが突然変異の芽変わりか、海外の未開拓地の発見に頼る方法がそのほとんどです。観棕竹の世界では新品種作出は他の植物に比べ遥かに困難でしょう。
5.増殖する。上達すれば、子株が毎年とれるようになります。すべてがよい柄の子とは言えませんが、最上柄の子、全体の半分に柄の入った半柄の子、ほとんど柄の見えない地味柄の子。柄が多すぎて葉焼けしそうな派手柄の子、縞柄が無くなり、無地になってしまった縞抜けの子、どの子もとてもかわいく大事な子株です。殖やす楽しみも大いにあります。観棕竹を含む蘭・おもとなど古典園芸植物で共通することですが、交換する場があるということです。殖えた同一種と希望する品種との交換も可能であるということです。
6.植物を栽培しその成長過程を観察し、植物と語り合いながら栽培自体を楽しむということが観棕竹の栽培の原点であるということは間違いありません。植物は、話せませんが、栽培者の愛情次第で目に見えて綺麗に成長してくれるものです。永遠の命のある観棕竹を後世に引き継ぐことも大きな楽しみでもあります。